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16.亀裂

ผู้เขียน: 杵島 灯
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-08 11:53:12

 思わずジゼルは後退るが、ジゼルが庭園で話を聞いてしまったことを知らないライナーは満面の笑みだ。

「実は僕、ずっと前に象徴花を決めていたんです。実際にピンが届くまでは決めたことを義姉様にナイショにしておいたんですけど、でも、出来上がったら真っ先に義姉様に見ていただこうってずっと決めてました。だってこの花は――」

「もういいわ」

 硬い声でぴしゃりと言い切ると、興奮した様子で話していたライナーが戸惑ったように目を瞬かせる。

「あの……義姉様?」

「象徴花を決めたのね、おめでとう」

 顔を背け、ジゼルはそのまま扉を閉めた。

「義姉様?」

 廊下でライナーが呼び、扉を叩く。ジゼルが無視を続けていると音は少しずつ大きくなり、ライナーがジゼルを呼ぶ「義姉様!」という声も必死さを帯びてきた。

「義姉様、義姉様! 僕、何か悪いことをしてしまいましたか? でしたら謝ります、ごめんなさい! だからどうか、扉を開けてください!」

 もちろんジゼルに扉を開けるつもりはなかった。ライナーの声を聞きながらずるずると座り込み、床の上で唇を噛んで耳をふさぐ。

 そのままどれほど経っただろうか。扉を叩く衝撃が背中越しに伝わらなくなったので、ジゼルは両耳からそっと手を外した。しばらく待っても何も聞こえないのでライナーは帰ってしまったのだろうと思ったとき、外からぽつりと小さな声が聞こえた。

「……義姉様、ごめんなさい……」

 悲痛な声を残してライナーは扉の前から立ち去る。その足音は、はげしい疲労を覚えたかのようにゆっくりとしていて、十一歳の少年とは思えないほどに重いものだった。

 何も悪くないライナーに謝らせた罪悪感と、自分の身勝手さに対する腹立ちとが、ジゼルの心にどっと湧き上がってくる。

 それでもジゼルは扉を開めたままだった。ライナーの背に向かって声をかけようともしなかった。

 この日を最後にライナーは、ジゼルへ誘いをかけてくることがなくなった。

 ジゼルと会っても挨拶程度の会話しかしない。

 たまに遠くから寂しそうなライナーの視線を感じることもあったが、ジゼルはすべて見ないふりをした。

 ライナーの襟元に菜の花のピンが飾られるようになっていたためだ。

 それはライナーの心が他の誰かのもとにあるという証拠。ピンを見るたびに胸が締め付けられるジゼルは、どうしてもライナーと行動を共にすることができな
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